以下、いつものように『理屈コネ太郎』の管見による私見である旨を御銘記のうえ読み進めて戴きたい。
『大腸内視鏡挿入法のヒント⑦ 肛門からの挿入長と腸管の伸び』でも述べたように肛門から50センチ内視鏡を挿入したからといって、腸管の50センチの深部まで到達したとは限らない。それは、内視鏡操作によって腸管が伸展するからである。
先輩や指導医も腸管を伸展させるな…というだろう。では、腸管はなぜ内視鏡操作によって伸展してしまうのか。
腸管が伸びてしまう原因は、スコープと腸管との間の摩擦である。スコープと腸管が粘着して、スコープの移動に腸管が引きずられてしまう…という感じかなあ。
プッシュ操作で腸管を限界まで伸ばしたあとにプッシュ推力が腸管伸展の戻る力を超えたところで、スコープは腸管内で進入し始める。
もしスコープと腸管壁の接触部位の摩擦がゼロにちかければ、腸管を進展させる距離も短くなるし(理屈的にはゼロに近い)、プッシュも小さな力ですむので、患者が苦痛を感じる事も減るし、穿孔のリスクも減る。
スコープの腸管壁間の摩擦を減少させる手技を自分で工夫して考えてみよう。思考&試行が内視鏡手技上達の一番の近道だ。
とはいえ、2つだけヒントを。
ひとつめは、事前に潤滑材の量や質や塗布部位を工夫すること。『理屈コネ太郎』の知る達人級の内視鏡医の1人はオリーブオイルを検査前にスッコープ全体に塗っている。
2つ目のヒントは少し抽象的になるが、静止摩擦>動摩擦の物理現象を思いだそう。例えば、ステッキ現象が起きて、「仕方ない少し強めにプッシュするか…」と思うまえに、アングル操作で進行方向の内腔を捉えつつスコープを右や左にロールさせて静止摩擦を動摩擦に変更してみてはどうだろう。この企てが巧くいけば想定よりも弱いプッシュ力で深部に進めるので腸管を伸展させにくくなる。
ところで、静摩擦を動摩擦に変更させて進行方向へのプッシュ力を弱く済ませる事は、ジグリングでも可能である。数センチのプッシュとプルを素早く繰り返し行う事で動摩擦の状態を維持できるのかもしれない。
架空の話で恐縮だが、もしも腸管壁との摩擦をスコープのシャフト部位全てに渡ってゼロにする事ができるなら、柔軟でものすご~く長くて内視鏡さえあれば盲腸到達はたぶん全然難しくないと『理屈コネ太郎』は思っている。
皆さんも一度じっくり考えてみて欲しい。
スコープと腸管壁の間の摩擦が極めてゼロに近かったら内視鏡操作はどうなるのか…と。
今回は以上。
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